キングゴジュラス野生体捕獲作戦 後編

昨日のSSの続き

キングゴジュラス野生体捕獲作戦 後編
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翌日、バーナードとパーシーの2機のゴジュラスの他に、マッドサンダー1機とディバイソン4機も捕獲隊に入った。

「全機揃ったな。今日こそ捕獲するぞ」
マッドサンダーのコックピットから手を振っているのはヘリックだった。
「大統領!?」
「君達の話を聞いて、私も一目見たくなってな。さすがにこれだけの兵力があれば捕獲できるだろう」

「さあ、早めに終わらそう。マッドサンダーとディバイソンは首都防衛の貴重な戦力。一時的に借りている状態だ。うかうかしてたら事だ」
しかしそう言うヘリックの目は、焦りの表情というより少年の様に輝いて見えた。
なんだかんだ言って、彼もまた生粋のゾイド乗りなのである。

今日もビーコンを頼りに近づく。
「居た。大統領、あいつです」
「あれか…。しかし実物を見ると本当にでかいな…」
「でしょう。しかし、さすがにこの戦力ならいけますぜ。おっぱじめましょう」
「うむ。では作戦を開始する。ディバイソン隊、前に!」

かくして、二日目の捕獲作戦は幕を開けた。

「撃て!」
ディバイソン全機が密集してキングゴジュラス側面に移動、衝撃砲を嵐のように放った。
対戦闘ゾイド用の装備。中型ゾイドであれば為すすべなく吹き飛ぶ衝撃砲が4機分、門数にして12門が一斉に火を噴いた。

側面からの猛烈な衝撃砲で体勢を崩し、そこへ間髪入れず体当たり。たまらず転倒したキングゴジュラスを捕獲する。
これがシナリオだ。
だが、思うように効果が上がらない。
「少しも効いてないぞ…っ! くそっ、突撃だ!」
ディバイソン隊が、たまらず突撃する。さすがにこれなら…!

だがキングゴジュラスは瞬時に体勢を変え、ディバイソンを向いた。全力で突撃するディバイソンに強烈な蹴りの一撃を見舞う。
二機が吹っ飛び、一機が臆した。
残る一機は何とか体当たりに成功する。だが何の手応えもない。

「こいつ…」
まるで巨大な岩のような感じ。確かに押しているがまるで動かない。
「デスザウラーだってグラつくんだぜ……。なんてヤツだ……」
ふいに、キングゴジュラスが腕を振り上げた。
「いかん、退避っ…」
だが言い終わる前にディバイソンの巨体は宙に舞った。

「まさか……」
わずかな間にディバイソン4機が戦闘不能になった。

キングゴジュラスは、次にマッドサンダーとゴジュラスの方を向いた。
「…支援、頼むぞ」
ヘリックのマッドサンダーが、ぐっと前に出る。
「大統領!」
「大丈夫だ。だが…、最初から全開でいかねばな。マグネーザー始動!!」

対峙するキングゴジュラスとマッドサンダー。
ヘリックには、まだ勝算があった。
マグネーザー。サンダーホーン。
この武器は突き刺した後に電撃を放つ事で、敵メカを内部からショートさせ、ストップさせてしまう。
さすがにキングゴジュラスとて例外ではあるまい。これさえ成功させれば。

下手をすれば電撃を放つ前に生命体を貫いてしまう。
マグネーザーで捕獲するなんて前代未聞だ。
「生命体を貫く事に気をつけろ…。と言っても、そっちの方が難しいかな…」
ヘリックはこの時点で、キングゴジュラスの実力をデスザウラー以上と判断していた。
「マグネーザーの放電は強力だ。並のゾイドなら麻痺どころかそのまま死ぬ…。だが…あいつ相手ならその心配はあるまい。むしろ足りるかどうか…、か。」

マッドサンダーが、ゆっくりと間合いを調整する。
「極めて難しいが、やる他あるまい」

ギュゥゥゥゥ!!
マグネーザーが高速回転し、キングゴジュラスに向けられる。デスザウラーさえ貫く、共和国最強の武器。
ついに対決が始まった。

さすがに警戒したのか、キングゴジュラスが初めて構える。
「おい、援護と言われたが、どうやったら…」
バーナードとパーシーは圧倒され、なかなか動けない。
「あぁ…」
だがついに決意を固め、動く。
「マグネーザーをぶち込む隙を作る。俺達に出来る事はそれだけだ」

72mm連射砲が猛烈な勢いで火を噴いた。
狙いはキングゴジュラス…ではなく、その周辺の地面。
猛烈な射撃は地面をえぐり、砂煙を上げた。
たちまち奪われる視界。
「野生体にレーダーは無いだろう! 大統領!」

マッドサンダーが突っ込みをかける。
いける! その確信。
だが砂煙の中から、とんでもない絶叫が起こった。

ガァァァァアアアア!!!

キングゴジュラスの咆哮だ。
強烈な音波がこだまする。マッドサンダー、ゴジュラスの巨体が大きく揺れた。
「このゴジュラスが怯えているだと!? ぐおっ…、こらえろゴジュラス…!」
絶叫はゾイドを怯えさせただけではない。メカニックにもダメージを与えていた。

砂煙からキングゴジュラスの巨体が飛び出す。
「大統領…!」
マッドサンダーもダメージを受けている。もはやマグネーザーの回転は弱弱しい。
「くっ…、これまでか!」
コックピット内でヘリックが叫ぶ。

ガシッ!
キングゴジュラスがマグネーザーをつかんだ。
「へし折る気か!?」
「大統領、脱出を!」
もはやマグネーザーは全く回転していない。
巨大な腕でマグネーザーをつかんだキングゴジュラス、その巨大な頭部がゆっくりと近づいてきた。
バーナードとパーシーは、思わず目をつぶった。

だがキングゴジュラスは、何故か攻撃する事はなかった。
そしてその目を見た瞬間、マッドサンダーと、そしてマッドサンダーを通じてヘリックは知った。
キングゴジュラスの大いなる想いを…。


かつて数え切れないほどの生命で溢れかえったこの地。
だが人の愚かしさが美しいこの地を引き裂き、崩壊させた。
その結果生まれた、自身のような特殊な個体。
生まれてしまった事、それこそが生態系の崩壊の象徴。存在する事が忌まわしい存在。それが自分。
孤独。怒り。

元々、ゾイドは人の想いを汲むだけの高度な意思を持つ。平和の為の志を信じ、戦闘を受け入れた。
しかし今、それが分からない。分からないから苛立つ。


「お前は…、そんな風に思っていたのか…」
キングゴジュラスは手を離した。
”去れ”
そう言っているようだった。

しかしヘリックはもう一度操縦桿を握った。
「お前の想い、しかと受け取った。だが………、」

ヘリックとて、共和国の指導者としてしている”戦争” その全てを理解しているとは言いがたい。
理想は今でも強い。ゾイドを愛する気持ちも本当だ。だがそこに起こる矛盾に対し、答えが出ていないのも事実。
だがそれでも、言葉にならない想いがあふれる。
キングゴジュラスよ。
お前の想いはもっともだ。だがそれでも…、

「今度は私の想いもぶつけよう! 言葉にはならんが感じてくれ。マッドサンダー、まだいけるか!?」
ギュゥゥゥ!もう一度、マグネーザーが力強く回り始めた。マッドサンダーが力と気力を振り絞る。

「バーナード、パーシー、ここからは手出し無用だ。そこで我々の戦いを見ていてくれ」
「へ…、大統領…?」

全力の体当たり。キングゴジュラスはフリルをつかんで受け止めた。
「そこをつかむか。デスザウラーには出来ない芸当だな」
体格に余裕があるからこそだ。
「やはり簡単には受け入れてくれないな。だが、まだまだこれから!踏ん張れ、マッドサンダー!」
全力でキングゴジュラスに押し込む。マグネーザーを。そしてヘリックの想いを。

「おい」
バーナードが言う。
「あぁ、キングゴジュラスが……」

戦力差は歴然だった。
キングゴジュラスはデスザウラーはおろか、マッドサンダーすら遥かに越えていた。
だが今は、もうマッドサンダーを倒すような事はしていない。ただその全ての攻撃を受け止め、見極めているように見えた。

「これならどうだ…!」
もはやマッドサンダーと完全に一心同体し、全てをぶつけるヘリック。

「そういえば、最初の頃はこんなのだったな…」
「あぁ…、確かにそうだった。宇宙船が来る前は……、ゾイド戦は互いの誇りと想いをぶつけ合うものだった。いつからか効率よく敵を殺す為だけのものになってしまったが……、なんでなんだろうな」

半刻ほど対づいた戦いの後、マッドサンダーのエネルギーがついに尽きた。
コックピットから出るヘリック。
そしてキングゴジュラスは、ゆっくりとヘリックに近づき、その頭を下げて見せた。

「野生体が、心を開いちまったぞ…」
「いや、ずっと前はこれが当たり前だったさ…。捕獲機で無理やり捕まえている内に忘れちまっただけで…」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

三時間後、グスタフが到着し、破損機の応急修理と補給が完了した。
キングゴジュラスの巨体はグスタフに乗るものではなかったが、もはやヘリックの言葉で付いてきてくれた。

「しかし、ようやくやりましたな」
「まさかこんな形で決着するなんて…。当初は思ってもみませんでした」
「ゾイドの奇跡を目の当たりにした感じだな…。いや、思い出したというべきか」
共和国首都への帰路、三人はキングゴジュラスを見上げながら話し合った。

「しかし大統領、これで捕獲は出来ましたが、この後どうするおつもりで? 本格的に戦闘用に改造するのはかなりの期間がかかりそうですが……」
「いや、それは必要ない。こいつならもう、最小限の改造だけでいけるさ…」
「違いありませんな」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

かくして、キングゴジュラス野生体はヘリック共和国に編入された。
通常、このクラスの野生体を戦闘用に改造するとあらば、徹底研究、その体格に合わせた装甲の製作、火器の開発あるいは選定、エネルギータンクの設置、補助ブースターの装備、etc. 様々な工程が必要であり、開発設計には最低でも2年はかかる。
しかしキングゴジュラスは、ほんの最低限の改造だけ…、わずか1週間程度の改造で、圧倒的な最強のゾイドとして成り得たのであった。

自身の想いとヘリックの想い。それを背負い、キングゴジュラスは暗黒大陸へ渡っていった。
その先にあるものは、まだ誰も知る由もない。
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コメント

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キングゴジュラスとヘリック大統領の絆。そして、ゾイドと人の絆

後編を楽しみに待っておりましたが、読了して胸が熱くなると共に、感動しました!

キングゴジュラスがワンオフ機でヘリック大統領がパイロットであった理由を、戦争による生態系の破壊からキングゴジュラスが生まれ、その想いを受け止め、心を通わせられたのが大統領だったという展開は、ゾイドを詳しく知り、心底愛しておられる三式さまでなければ描けない、素晴らしいバトルストーリーだと感じました。

そして、戦争が矛盾を抱えながら進んでいき、ゾイドと人の心と絆が忘れ去られそうになる中で、ゾイドと人が心と心をぶつけ合ってお互いを認め合い、原初のゾイドと人の関係を思い出す様には、生命と心を持った機械獣ゾイドという、他に例を見ない魅力的な存在だからこそ描けるドラマがあるのだと感じました。

また、オルディオスやバトルクーガーといった後年キメラであると設定されたゾイドや、TFゾイドにも触れられているところも素晴らしいです。

本当に素晴らしい作品を、ありがとうございました!

No title

こんなの読んじゃったらキングゴジュラス欲しくなるよ・・・
超お高いのに・・・バカみたいに場所取るのに・・・

年末で出費も収入も不安定要素が一杯だけど、
一応念の為に、キングゴジュラスの中古探しとこうかなぁ(遠い目)

No title

キンゴジュは、ゴジュラスの中の突然変異種が長年の進化を経て・・・なんて妄想もしたりしています。もしくは、共和国の度重なる戦いで、仲間ゾイドを守るために戦ったのに、その守る筈だった仲間達を守れずに先立たれ、哀しみと無念の思いを抱いて戦場へ赴き、暗黒大陸戦争で大破したゴジュラスに様々な強化を施す実験の過程で生まれた・・・というような設定も考えたりと。

No title

>コバルトブルーさん
実験的な部分も多かった作品ですが、お褒め頂け光栄です。

自分の中でも、考えがまとまっていない部分も多くて、後半は苦労しました。
作中の
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だがそれでも、言葉にならない想いがあふれる。
キングゴジュラスよ。
お前の想いはもっともだ。だがそれでも…、
「今度は私の想いもぶつけよう! 言葉にはならんが感じてくれ」
の部分の感じで書いています。
今後もこういった方向でも書いてみたいと思います!

>NoNameさん
ぜひ捕獲してあげてください~
うかうかしてるとこのSS以上に捕獲困難になっちゃいますのでw

>G.Gさん
キングゴジュラスはなにしろ史上最強のゾイドなわけで、何か背景は想像したいですね。
色んな方向から考えたいですが、このSSでは特にワンオフという部分から考えたものであります。
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三式

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