帝都防衛航空隊_6

これの続きです。

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ミーバロス陥落はそのままゼネバス帝国首都の陥落に繋がりかねない事態であったから、無論奪還計画は立てられた。
しかし新指令本部が壊滅した中で組織立った抵抗は出来ずその願いは遂に適わなかった。
むしろ散発的な突撃は、ただ悪戯にゾイドと人員を消費するのみであった。
同日中に共和国の増援が海を渡って再度上陸し、グスタフが兵士や弾薬や設営部隊を急速に進軍させ、いよいよ奪還は厳しくなっていった。
敵ながらこの手際の良さはあっぱれであった。
いまやミーバロスは複数のウルトラザウルスとゴジュラス部隊まで進軍し、早くも奪還は不可能という悲壮感が蔓延しだす程であった。

危機は無論ここだけではなく、先に陥落したダリオスには早くも共和国飛行場が完成し、爆撃圏内となったオベリア、トビチョフ、イリューションには猛烈な爆撃が開始された。
日増しに都市は瓦礫と化していった。
誠に無念な事であるがこれらの都市の防衛を十分にする事は出来なかった。
それは今やゼネバス帝国首都およびウラニスク工業地帯の防御を完璧たらしめる事こそが急務な為であった。
残酷な事であったが、この時既に、首都とウラニスクの防衛を十分に手厚くすれば、その他に割ける余剰戦力は帝国に無かった。
それ程の犠牲をここ数ヶ月だけの戦闘で出していた事であったし、また続々と増産されるサラマンダーやウルトラザウルスに対抗するには、より多くのゾイドを首都とウラニスクに配備しなければならないという状況の悪化でもあった。

しかし誰しもが気付きながら口に出すのが恐ろしくて黙っていた事があるのも確かであった。
それはタイガーゲージの陥落であった。
ウラニスクで生産されたゾイドは輸送トラックあるいはゾイド自身の足によって陸路で各地へ送られていたが、首都へ輸送される際はタイガーゲージの道を通路としていた。
何故ならタイガーゲージは中央大陸の最西の地であり、共和国領土から最も遠い安全な地とされていたからであった。
それは事実であったが、いまやその安全もいつまで続くか全く分からぬものであった。

その為さすがにタイガーゲージは防衛を強化しようという事が決まり、首都、ウラニスクの双方からいくらかの防衛戦力を派遣する事が決定したが、共和国の進撃は我々の予想を超えて素早かった。
戦力を派遣する事が決定した矢先、タイガーゲージはウルトラザウルスの砲撃と10機を越えるゴジュラス部隊の突撃を受け、あえなく陥落した。
戦いは3日と持たず一方的なものとなったが、砲撃とゴジュラスの格闘戦を前にしてはレッドホーン中心に編成された防衛部隊では成す術が無く、援軍の到着まで持ち堪えられなかったの当然であった。

戦場の地図は急激に塗り替えられ、もはや帝国の支配域として残っているのは帝国首都、ウラニスク、バレシアだけとなった。
既にゾイド保有台数は1:3にも開き、戦況を覆す事は現実的に不可能であった。
帝国首都、ウラニスクの防衛は分厚く固められたが、数で圧倒する共和国の猛攻を前に徐々にジリ貧になっていく事は明白であった。
バレシアもサーベルタイガーの精鋭集団が持ちこたえているが、これも時間の問題であろうと思われた。

この時点で、既に帝国の敗北は決定的であった。
しかし戦いを放棄するわけにもいかなかった。
共和国はあくまで無条件降伏を迫っていたし、今の戦況からいって態度を軟化させよう筈もないからであり、我々はあくまで徹底抗戦を続ける事となったのである。


私はこの少し前からウラニスク工業地帯に居たが、それは先の戦いで失った愛機をウラニスクまで直接受領に来ていたからであった。
ウラニスク到着とほぼ同時にタイガーゲージに共和国が侵攻し、それ以来私はここで足止めとなっていた。
予定ではウラニスクで新規のシンカーを受領し、帝国首都防衛部隊に合流するはずであったが、いまや単機で戻るなど確実に自殺行為であった。
その為、逼迫する戦況と裏腹に皮肉な休暇が生まれ、私はゾイド生産工場の見学などを許された。
しかしこの偶然こそ、帝国の運命を変えた機体、EMZ-29シュトルヒとの始めての出会いとなった。
以前に工場を見学した折に聞いた開発中の新型空戦ゾイドは、今ようやく産声をあげようとしていたのであった。

技術将校に案内されたのは新型機開発の製造工場であったが、そこは通常のゾイド生産ラインとかなり異なっていたのが非常に印象的であった。
というのも通常のゾイド生産ラインは全てオートメーションされロボットアームが組み立てるものであり、人はそれを管理するに過ぎない。
しかし新型機や実験機、改造機はハンドメイドの部分が多い。
私がそこで見たのは始祖鳥の形をした飛行ゾイドの姿であり、瞬時にそれがプテラスと互角に戦える新鋭機であると理解した。
そして数奇な事に、私はこの試作機・シュトルヒのテストパイロットの一人として選ばれたのであった。

その日中に試作5機が滑走路に運ばれ、様々なテストが行われたが、試作機にも関わらずシュトルヒは癖の無い素晴らしい性能を発揮した。
最高速度M2.1はサラマンダー、プテラスと同格であり、まさに待望の高速機であった。
シンカーが考えうる限り全ての措置を施してなおM1.6しか出なかった事を思えば、この高速性能は実に大したものであった。
上昇力は空戦型シンカーと同程度かやや上回った程度であったが、コックピットが従来の共通コックピットを取りやめ与圧室を持った専用の物になっていた為、高空でも全く不便を感じなかったのは大いなる進歩であった。
操作に支障をきたさぬのだから、カタログ上のスペックでは同程度の上昇力であるが、シンカーに比べて平均して二割ほども結果が向上していたのは特筆すべき点であった。

空戦機動も問題なく、急旋回や下降からの急上昇など荒っぽい操縦も可能だったのはさすが最初から戦闘機として開発されたゾイドであると思うものであった。
聞くところによると主要部の材質が従来のジュラルミンからチタンに変更されたらしく、その剛性は驚くべきものであった。
反面、重量的にはジュラルミンよりも倍近く重く、その為華奢という程に細い体躯にも関わらず、空戦型シンカーを上回る重量であったのは意外であった。

ビームによる武装も強力で、加え長い尾翼を持っていた為、射撃時の機体ブレが少なく、狙いが定めやすかった。
その上空中で使える実用ミサイルも持っていた。
このミサイルは正式名称をSAMバードミサイルといい、レクチルに敵機を一瞬捕えるだけで補足し、あとは推力の続く限り自動的に追尾してくれるという実に画期的なものであった。

航続距離はプテラスには及ばぬものであった。
この点はマグネッサーウイングの技術で共和国に大きく水をあけられた帝国の泣き所であり、効率良い浮力を得られきれない故のものであった。
その為シュトルヒは主翼を大型化させてあり、前縁から中央にかけてをマグネッサー翼とし、後部をマグネッサーシステムを使用しない通常翼としていた。
これは翼の揚力を期待してのものであり、尾翼と共に航続力を大いに補った。
総合的に言うとプテラスに及ばぬまでも迎撃に使用するには問題ない程度ではあり、現状に対し必要にして十分というものであった。

唯一難を言うなら、垂直離着陸機能が無かった事であった。
最もシュトルヒの離陸滑走距離はシンカーより短く、それ程問題でもなかったのだが…。
ただ正直に言うと先日プテラスの垂直離着陸を目の当たりにしていたので、今にして思えばこれは妬みに近い思いだったのかもしれない。
現実的に問題ない数値であるのは確かであった。

この機体があと少し早く早く完成していたら…と思わずには居れなかった。
そうすればミーバロス上陸作戦も阻止出来ていたかもしれないし、サラマンダーの爆撃を阻止し前線を押し戻す事も可能だったかもしれなかった。
あるいは今からでも、この機体で絶対制空権を取り戻せば、奇跡の逆転に繋がるかもしれないと思った。
しかし試作機にしては素晴らしい性能を発揮したといっても、あくまでシュトルヒは試作機であり、細かい改修点は数多くあったのも事実であった。
実戦に耐えうる機体として量産するまでには、まだあと数ヶ月程度の成熟期間が必要であろう事は重い事実であった。
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コメント

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No title

>唯一難を言うなら、垂直離着陸機能が無かった事であった。
トップ絵のようなカタパルト発進ならカッコいいですが、通常滑走路だと足を使って走りながら助走付けて飛び上がるのでしょうか。シュールと言うか生き物らしいというか・・・ww

No title

試作機のカタログスペックを量産機が発揮できるとは限らないのでこれからがある意味正念場かもしれません。
大戦末期の旧軍の戦闘機が苦戦した理由の一つに熟練工の不足に伴う工作精度の悪化があるのでシュトルヒもこれに当てはまるのかどうかが気になります。
そういえば震電も烈風も実戦には間に合わなかったのでシュトルヒはどうなるのか…
これから非常に気になります。

No title

>3aさん
ウラニスクや首都にはカタパルトが完備されてると思いますが、それ以外の場所だと足を使って助走しながら飛び上がるイメージです。
実にシュールですね…。
文章を書いていて、脚部をランディングギアとして使うなら垂直離着陸機能は必須だなぁと思いました。
しかし帝国実用超音速戦闘機第一号のシュトルヒが完成されきった機体であるのは想像し辛い。
という事でああなってしまいました。

>屠龍さん
「試作機が量産機を上回るのはアニメや漫画だけ」とよく言われます。
私もどちらかというとその説に賛成で、それに法って試作機が改良され熟成され量産機となる。必然、量産機は試作機を上回るとしています。
していますが・・・・、今の帝国には悠長に熟成している時間が無い!
その為、中途半端な改良のまま量産してしまっています。

熟練工が居なくなって勤労奉仕の女学生が・・・っていうのはどこかで織り込みたいですねぇ。
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