帝都防衛航空隊_4

これの続きです。

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ウルトラザウルスは、かつてビガザウロと同じくらいのショックを大陸中に与え、その体躯は圧倒的と呼ぶに相応しかった。
帝国のスパイは、この超巨大ゾイドの建造をキャッチしていなかった訳ではなかったが、またしても現在の技術では不可能であるとして重要視しない愚を犯した。
サラマンダー時の教訓を生かしていないのは大いに反省すべきところである。
このゾイドの特徴はアイアンコングの2.5倍にもなる体躯であったが、それ以上に砲力であった。
ひとたび火を噴けば、いかなる基地もゾイドも屈し、その射程は100km/hにも及んだ。

無論、砲の威力や射程だけなら、優れてはいるが別段驚く程のものではなかった。
これより少し前に登場したゴジュラスMK-IIのキャノン砲は同程度の威力と射程があったし、我が方のアイアンコングのミサイルは同程度の威力と倍近い射程を誇っていた。
しかしウルトラザウルスが優れていたのは、砲の運用が画期的な事であった。

コングのミサイルは射程200kmのものが2発、50kmのものが6発、合計しても8発しか搭載できないし、ゴジュラスMK-IIのキャノン砲も携帯弾数が少なく、砲撃は長く続かない。
だから両ゾイドとも、まず砲撃を行い撃ち尽くした後は自ら爆炎の中に飛び込み生き残ったゾイドを格闘戦で各個撃破するというスタイルを採っていた。
強力な砲が誕生した後にもゴジュラスが現役に留まり、また超射程ミサイルを持つコングが格闘能力を持って生まれた意味はここにあった。

それに対しウルトラザウルスは4門のキャノン砲を持ち、その砲弾は体内にぎっしり積まれているらしく、際限なく撃ち続けた。
ウルトラザウルスは戦いを砲力のみで決する事が出来たという点で画期的であった。
またもう一点重要だったのは、ペガサロスやプテラスを背部の飛行甲板に搭載する事が可能だった点であり、これは主に護衛や砲撃時の着弾観測機として運用されていた。
このゾイドは強力なレーダーを備えただでさえ砲撃は正確だったが、着弾観測機を併用した砲撃の正確さはまるで悪魔のようであった。
こと砲撃のみで雌雄を決する頃が可能いう点において、このゾイドは革新的であった。

ついにウルトラザウルスを中心とした共和国大部隊が動き出し、一ヶ月も持たずダリオスが陥落した。
彼らは狡猾であった。
サラマンダーやプテラスの爆撃で壊滅した基地は、ゾイドこそ健在でも統制取れず組織だった抵抗が難しく、その進撃を止める事は叶わなかった。
そのやり口に、怒りや無力感といった感情よりも、むしろ途方も無い恐怖を感じ立ちすくんだ。

サーベルタイガーとヘルキャットの決死隊が編成され奪回を目指して出撃したが、共和国部隊に多少の混乱を与えただけであり、ついにダリオスは強力な共和国軍の支配域として決した。
決死隊が司令部に宛てた幾つかのデータを解析すると、帝国基地跡に建設される飛行場の様子があり、それは間違いなくサラマンダー用の大型滑走路であった。
この基地が完成すれば、サラマンダー、プテラスが爆撃に飛び立つ事は明白であった。
ダリオスから飛べるならば今まで爆撃圏外であったトビチョフも爆撃圏内に出来るので、この危機が伝わるや同地域における疎開は一気に加速した。
いやそれよりも危機は他にあった。
トビチョフが陥落すればそこにも飛行場が建設されるであろうし、そうすると帝国の生命線・ウラニスク工業地帯すら爆撃圏内になってしまうのであった。

もう一つの危機は、ミーバロスとイリューションであった。
サラマンダーの爆撃で壊滅的なダメージを受けたこれらの地もまた、共和国の大群を相手に危機に瀕していた。
だがこれらの地は、今や帝国にとって絶対に陥落させてはいけない最重要拠点であった。
何故ならばミーバロスもイリューションも帝国首都に近く、ここに飛行場が建設されるというのは、すなわち帝国首都が直接爆撃される事を意味するのであった。
その為、アイアンコングを中心とした精鋭部隊が結集され、またパイロットも背水の陣の覚悟で共和国を迎え撃ちった。
その結果、両地域はかろうじで共和国を山脈の向こう側へ押し返す事が出来た。

私はそれまで、爆撃こそ最大の恐怖だと思っていたが、地上部隊こそ真の恐怖である事を知った。
それは爆撃とは破壊であるが、地上侵攻とは占領である事だった。

我々には空からウルトラザウルスを撃破する可能性を研究する命令が下されたが、これはおそらくプテラスに空戦で勝つ事よりも困難であった。
私は一応の士官であり隊長であったから、この研究の会議に参加する事となった。

水平爆撃は論外であった。
ウルトラザウルスの対空火器の量はハリネズミと呼ばれる程で死角が全く無く、また主砲が対空用として使用できる点は特に厄介であった。
対空用に放たれる主砲弾は編隊の中で爆発し、一気に編隊ごと撃墜する能力を有していた。
主砲弾は特殊な構造をしており、爆発と同時に半径数百メートルに1000発程の焼夷弾がばら撒かれる仕組みになっていた。
焼夷弾は3000度にもなる超高熱の飛翔体であり、かすりでもすればたちまち機体が燃え上がるという寸法である。
弾丸が正確に編隊の中で爆発する仕組みであるが、これは弾丸の一つ一つの中に小型レーダーが入っている為で、30m程度以内を通過するだけで爆発するというものであった。
マジック・ヒューズと呼ばれており、非常に厄介な弾丸であった。
それと同時に、弾丸全てにレーダーを組み込める程の物量を誇る共和国が嫌というほど実感できる装備でもあった。
水平爆撃は密集して飛ぶ編隊が一斉に爆弾を投下することによって命中率を高めるのだから、これは墜してくれと言っているようなものであった。

急降下爆撃は水平爆撃よりはまだ可能性があったが、問題点も幾つかあり、まず急降下爆撃は爆撃後に機首を引き起こすのだから、機体に相当な負荷がかかるという点であった。
これは空戦型シンカーでは耐えられない程のものであり、急降下爆撃を行うならノーマルタイプを使用するしかないとされた。
もう一つの問題はウルトラザウルスの異様なまでの防御力であり、遠距離砲戦を展開するゾイドにしては不必要なほどの強度を誇り、ゴジュラス以上に頑丈な装甲はサーベルタイガーの牙にすら耐えて見せた。
ただ極めて少ないが弱点が無いわけでもなく、飛行甲板は非装甲部であったのと、相変わらず共和国伝統のキャノピー式のコックピットであったから、この二点が可能性であった。
ただキャノピーは目標とするにはあまりにも小さく、急降下しながら正確に狙うのは現実的に不可能であったから、可能性があるとすれば飛行甲板であった。

飛行甲板を使用不能にするのは大きな意義があった。
すなわち着弾観測機を発着不能たらしめれば、それはウルトラザウルスの遠距離砲撃の精度を著しく下げ、砲撃で破壊される味方の数を大きく減らすことが出来るだろう。

シンカー部隊は急降下爆撃隊と戦闘機隊に分けられ、急降下爆撃を成功させるべく網訓練に励んだ。
戦闘機隊とはすなわち、ウルトラザウルスの艦載機と戦うものであった。
当然であるが艦載機は着弾観測機であるが、同時に戦闘機なのである。

私はこの内の戦闘機隊となった。
急降下爆撃隊の訓練は、陸軍のレッドホーンを借りて行われた。
レッドホーンにはウルトラザウルスの飛行甲板に似せた板を背負わせ、それに訓練用の油脂で出来た模擬爆弾を落とすというものであったが、まずまずの成績を収めるようになった。
しかし対空砲火の無い状態での訓練がいかほどの効果を生むかは疑問でもあった。

戦闘機隊は非常に難度の高いものであったが3機編隊を徹底し、共同で対峙する事を基本とした。
無論この戦いをしたところで、プテラスは単機でもまだ有利に戦だろうというのは事実であった。
それでもいくらかはマシな戦いが出来ると思えたし、何より少なくとも急降下爆撃隊に向かわせる事位は出来ると思われた。

我々はダリオスに向けて出発する予定であったが、それは意外な形で裏切られる事となった。
そろそろ訓練過程を終了しダリオスに転進する準備を本格的に始めた日の朝、緊急通信が入り我々は皆滑走路に呼び集められた。
シンカーは全機滑走路に並べられ整備員が慌しく駆け回っており、戦闘機型には30mm機関砲の弾が、ノーマルタイプには翼下に25番250kg爆弾が6発ずつ取り付けられており、いずれも模擬弾でなく実弾であった。
特に戦闘機型はベルト給弾式の弾帯が翼下にまでぶら下げてあり、定数オーバーの積載であった。
そうしている内に暖機運転が始まり、ミーバロスに共和国上陸部隊が出現したとの事実を知る事になったのである。
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