第343ライジャー独立部隊(後)

こちらの続き。
ずいぶん間が空きましたが、ライジャーのSSの後編です…。

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ぐんぐん、マッドサンダーとの距離が近づいてくる。
だが敵の陣形に一切の乱れはない。

「隊長、やはり気づいていないのでは?」
「マッドは司令塔を持つようなゾイドだ。まさか気づいていないわけはあるまい」
しかも最新鋭機だ。レーダーなどアビオニクスも最高のものが使用されているに違いない。
「くそったれ、近づかれても問題ないと思ってやがるんだ。目にもの見せてやるぞ」

俺たちは、ライジャーを最高速度320km/hまで引き上げた。
距離が20kmを切ったあたりから、猛烈な砲撃が俺たちを襲った。
高威力のビーム。
おそらくマッドサンダーの主砲だろう。
だがこの距離。ライジャー機動力をもってすればどうという事はない。
「至近弾にも注意しろ。思ったより高威力だ」
マッドサンダー部隊との距離は、いよいよ近づいてきた。

距離が4kmを切ったあたりで、さすがに敵のアロザウラーが動き出した。
「砲撃で1機も仕留められなかったので焦ってやがるな。ここからは俺たちのターンだぜ」
アロザウラー3機と、互いに直接目視出来る程の距離まで近づく。
「この距離なら、同士討を恐れてマッドの砲も来んだろう。存分に暴れるぞ」

アロザウラーが低く唸った。
俺たちも、それに呼応して吠える。
前哨戦としてはいい相手だ。
アロザウラーは重装甲であり、またなまじ違うタイプだけに、格闘戦ではコマンドウルフより厄介な相手だった。
だがそれだけに、肩慣らしとしては申し分ない。

「じゃぁいくぞ。念の為に言っておくが、アロごときで無駄なエネルギーを使うんじゃねぇぞ」
言って、いきなりライジャーを限界近くまで加速させ、アロザウラーに突撃する。
距離は500m。
この距離でライジャーの突撃をかわせるゾイドなど居ない。
それを知ってか、むしろ怯まず、火炎放射をこちらに向けて放ってくる。
「いい判断だ。さすがマッドの護衛だけはあるぜ…」
だが俺は、構わず突撃する。
下手に避ける方が、かえって何度もダメージを負う。何より時間を喰う。
むしろダメージ覚悟で一気に叩き潰せば…!

ガシッ
前脚でアロザウラーに一撃を見舞い、そのまま押し倒す。
喉元を踏みつけ、その身動きを奪った後、周辺の機体を見渡す。
残る2機のアロザウラーは、それぞれ俺の部下のライジャーが睨みを利かせている。
「いい具合だ」
俺は踏みつけたアロザウラーの喉元に牙を刺し、その機能を停止させた。

残り2機。
「どうします?まぁ負けることは無いでしょうが」
「そうだな……、4対2になったわけだが……、ここはっ!」
言って、ライジャーを急旋回させ、アロザウラーから一気に離れてゆく。
「2,3番機は付いてこい。4番、アロ2機だ。いけるな」
俺は残るアロザウラーを4番機だけに任せ、マッドサンダーへ突撃した。

ライジャー4機でアロザウラー2機を倒すのは造作もないだろう。
だがあえて、今はこの機を利用した方がいいと判断した。
今、マッドは、アロザウラーの危機に、慌しく状況分析・部隊への指示を行っているだろう。
だからその混乱を突く。
指揮官機ゆえの弱点だ。

「マッドの通信に割り込めりゃ有難いんだが」
「…さっきからやってるんですが難しいですね…。ノイズしか聞こえません」
「チッ、さすが最新鋭機様だ」

どうやらこれ以上の小細工は無理らしい。
距離がぐんぐん近づいてくる。
マッドサンダーの灰色の巨体が目視できる。
もはやレーダーなど必要ない。

「散開しろ!」
直前で、俺は叫んだ。
俺の機はマッドの左、部下の機は右と後方に位置し、一斉に突撃をかける。
マッドの砲がうなりをあげて連射される。
俺の機には副砲が、後方から攻める3番機には主砲の嵐が吹き荒れた。
至近距離。
おそらくレーダーと連動したそれは、正確に俺たちを狙う。
一瞬でも気を抜けば当たる。
「くそっ、アロザウラーと交信してるなら、もうちょっと優しいと思ったんだがな…」

だがマッドが共和国最強の火器管制システムを持つゾイドだとして、俺たちも帝国最速を誇る高機動ゾイドだ。
負けられない。
ついに50m程の距離に接近し、一気に飛び上がった。
狙うは…、砲の破壊!
まず砲を破壊・無効化した後、裸になったジェネレーターを存分に牙で破壊する。

だが瞬間、マッドがその首を大きく横に振った。
長い角が最高速度で飛び掛るライジャーを捉え、横腹に強烈な一撃を叩き込んだ。
2番機が彼方へ吹き飛ぶ。
その体は中央から無残にひしゃげていた。
「くっ…」
まさか、この帝国最速を捉えるとは、反射神経は予想以上だ…。
「だが…っ!まだまだぁ…!」
残った俺の機と、後方から攻める3番機は、貴重な犠牲を糧に、砲に取り付く事に成功した。

零距離。
レーザーサーベルの出力を最大にし、砲に噛み付く。
分厚い鉄の塊を穿ち、レーザーサーベルが徐々に穴を開けていく。
内部でスパークが光る。
「これで砲は仕留めたぜ…!」
後は背部のジェネレーターを狙えば…!

角、そして予想以上に早く動く首は想定外だった。
だがこれで主だった火器を奪ったから………、

ドンッ!
しかしそう思った瞬間、マッドの主砲付近で激しい音が響いた。

「なっ!?」
見ると、バラバラになったライジャーが、今まさにマッドの背中からずり落ちていた。
主砲は…!?いや、見るとマッドの主砲は基部ごと吹き飛んで無くなっている。
思わず、マッドの背から飛びのき、少し距離をとった。
そして悟った。

…おそらく、砲はライジャーにより破壊されたのだろう。しかしその状態で強引に、マッドはビームを発射したに違いない。
あの爆発は砲の暴発だ…。
砲を暴発させ、ライジャーごと吹き飛ばしたのだ。
しかし主砲が暴発したにも関わらず、マッドの背中は多少黒くなっただけでノーダメージのように見えた。

「くそっ…、化けモンかよ…」
あれだけ高威力の砲が背中で爆発したのにノーダメージ…。
おそらく、砲そのものは後続の修理部隊が取り替えるのだろう。
だがそれでも、躊躇無く砲を暴発させ2番機を撃破したのは、絶対的な防御力への自信からに相違ない。

俺の潰した副砲は、運良く発射そのものが出来ないほどに破壊していたらしい。
でなければ俺のライジャーも、今頃はスクラップになっていた筈だ…。

「隊長、お待たせしました」
戦乱の中、アロザウラーを片付けた4番機が駆けつけてくる。
「状況は…」
「…あまり良くないな。背中の砲は潰した。だが2、3番機は………」

その時、レーダースクリーンが新たな機影を捉えた。
マッドの後方から近づく大型の機影が2。
「くそっ、新手か。……この動きは、ゴジュラスか……」
おそらくマッド救援に駆けつけた増援。
一直線にこちらを目指している。

「…どうします?」
この上ゴジュラス2…。
「……決まっている」

「ゴジュラスが来る前に、このデカブツを片付ける!」
背中の砲を破壊したとはいえ、いまだ本体は無傷だ。
既に戦力の半分を失った俺達が、倒せる保証はなかった。
…ライジャーの機動力を以ってすれば、逃げる事など造作ない。
一旦離脱し、次の機会を狙う?
いや、しかし俺たちは、倒れた友軍機から遺体を回収する事すら出来ないのだ。
この状況で、敵に背を向けて逃げるなど………。
「お前だけには絶対引かない……っ!」

再び、マッドの左右に展開する。
俺が左、4番機は右に位置する。
背中の砲を失ったマッドからは砲撃は無い。
ただ首をゆっくりと左右に振り、俺たちの出方を伺っているようだった。

「いいか。狙うはジェネレーターだ。だが気をつけろ、ヤツの首の動きは思いのほか速い。このライジャーの動きすら捉えてきやがる…」
言うまでも無く、左右から突撃をかける。
その時、俺か4番機…、どちらかは必ず狙われるだろう。
「近づく時、余裕をもってジャンプしろ。そして背中に取り付いたら後は何も考えずジェネレーターを破壊しろ」

「隊長」
「…何だ」
「あのデカブツ倒して、帝国の歴史に名を残しましょうや」
「…そうだな。よしっ、行くぞ!」

ついに最後の突撃をかけた。
残りエネルギーなど気にしない。
ただこの一撃に全てを詰め込み、駆ける。
角を警戒し、かなり距離をとった地点から跳ねる。
俺と4番機は、ほぼ同時に飛び上がった。
この距離なら角も届かない。
さぁ、背中を……!

ザンッ!
しかしその刹那、空を切る鋭い音が響き、俺は信じられない物を見た。
マッドの片側の角が放たれ、4番機を貫いていた………。
「射出できるだと…」
どこまで奥の手を持ってやがるんだ…っ!

それでも、俺がひるんだのは一瞬だった。
だがマッドはその一瞬を逃さない。
ザシュ…ッ!
振り回された首の先に付いた、残った側の角が、俺の機体に当たる。
さすがに直撃は避けたが、機体は数十メートルも彼方へ飛ばされた。

「くっそぉぉぉおお! まだまだぁ!」
負けられない。
「ライジャー、俺に力を貸せェェえ!」
吹き飛ばされながら、がむしゃらに操縦を続ける。
もんどりうって地面に叩きつけられる瞬間、何とか体制を直し、後脚で衝撃を受け止める。
そのまま地面を蹴って飛び上がる。

さすがに俺の動きは予想外だったのか、マッドは反応できない。
だが俺も無理やり機体を操縦していたせいで、マッドの背中に取り付けない。
飛びついた先はマッドの司令塔だった。
「…分厚い装甲に感謝するんだな」
司令塔にゼロ距離からビームを叩き込む。
それはせいぜい、灰色の装甲を少し黒ずませただけだった。
だが中のパイロットにすれば、そうとうびびったに違いない。
「ささやかなお返しだがなっ!」
俺を、俺たちの部隊を、ライジャーを…、帝国をなめるな!

素早く司令塔から背中に飛び乗る。
ようやく砲も角にも邪魔されない位置に来た。
レーザーサーベルの出力を最大まで上げる。
ジェネレーターに狙いを定めた。
だが瞬間、ジェネレーターが高速で回転を始め、膨大なエネルギーがそこから生み出され始めた。
「なんだ…!?」
ピシッ…と音を立て、耐え切れなくなった周辺の空気が弾けた音を立てる。
「くっ…」
たちまち、ジェネレーターの周辺は、高エネルギーで覆われた。

いくら弱点とはいえ、この状況で牙をたてれば、それこそライジャーの牙の方が折れる。
「…参ったぜ、さすがは共和国最強の機体だ」
「……だが、それでも負けられんのだよ、俺だってな」

…俺は牙で刺す事を諦めた。
だがその代わり、機体を背中のジェネレーターの上に馬乗りに跨らせた。
ジェネレーターが生むエネルギー量は凄まじく、機体内に取り込みきれないエネルギーが、余剰分として空気中に大量に放出していた。
そのエネルギーに耐え切れず、ライジャーの腹部装甲が悲鳴を上げ始めた。
マッドとて、このエネルギー発生が永遠に出来るわけではないだろう。
こんな事をあと数刻も続けられるわけはない。
だがそれを待つわけにもいかないのだ。
増援のゴジュラスは、もうすぐそこまでやって来ていた。

「許してくれ、ライジャー…」
俺はコックピット内の、禁断のボタンのスイッチを入れた。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ドンッ!!
凄まじい音を立てて、マッドサンダーの背中でライジャーは吹き飛んだ。
ゾイド生命体を自爆させ、その爆発でジェネレーターもろとも吹き飛ばす。
ライジャーのパイロットが選んだ、最後の選択だった。


マッドサンダーは、ゾイド生命体こそ無傷だったものの、砲全損とハイパーローリングチャージャーの大破により、その戦闘力は無効化された。
増援のゴジュラスと救援部隊の到着した後も、ついに現地で修理する事は叶わず、強化グスタフに乗せられ、本国へ送還される事となった。

だがマッドサンダーを初めて撃退したこの事件は、両国の公式記録には残されていない。
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このSSの設定

UPするまで長いあいだかかってしまいましたが、実は仕上げてなかっただけで、骨子は前から出来上がっていました。
ただ、最初のプロットでは、隊長機がマグネバスターに貫かれて終わりという悲劇で締めるつもりだったんですが、ちょっと改変しました。

このSSの設定として、ジェネレーター=ハイパーローリングチャージャーには、特殊な設定を与えています。

高速回転時に膨大なエネルギーを生む。
そのエネルギーはマッドの体内(前頭部)へ蓄積される。

ここは公式設定に同じですが、オリジナルのものとして、
「回転時に生まれる膨大なエネルギーは、膨大すぎて全て前頭部へ送る事が出来ず、空気中に放電される」
「その為、高速回転中のハイパーローリングチャジャー付近には高エネルギーのフィールドが出来上がり、それは小型~中型ゾイドは近づく事が困難な程のものである」
「もちろん、コングMK-IIの大型ビームランチャーや荷電粒子砲クラスの攻撃には耐えられないが…」
という感じにしてあります。

待ってました&助けて

このSSの続きは長い事読みたかったんです。
愛機と共に散る兵士の姿は日本軍の特攻隊を連想しました。
このSSが映像化されたらラストで号泣すると思います。
零戦燃ゆのラストシーンで号泣したクチなので…連合艦隊では瑞鶴が海ゆかばがBGMで流れてる間ずっと泣いていました。
さて、もうひとつの方のタイトルの話を…
ゼネバスメモリアルボックスが手に入らない…
どうしても要るのに…
組み済みでも良いから欲しい…
コレが手に入ればジオラマが作れるのに…
オークションが出来ない不幸を呪いたくなります。
とほほ…

No title

散り際で見せる輝きは何とも惹かれますよね。
私は「散る桜、残る桜も散る桜」という句がとても好きで、この言葉の影響が非常に強いような気がします。
大和の沖縄への出撃の際の、一億層玉砕の先駆けちうのもぐっときますね。

ゼネバスメモリアルは、まんだらけでたまに見ます。
ただ多少プレミア値ですが、、。
調査などお引き受けできますよ。

お願いします

タイトル通り調査の方お願いします。
ゼネバスボックスが有ればジオラマも完成への希望が見えてきます。
お手数をお掛けしますがお願いします。
散り際の輝きは確かに惹かれます。
零戦は初戦の快進撃があるので、なおさらその最後が悲愴感に満ちてる気がします。
あと、数年前、大和ミュージアムで元海軍の軍人さんが「大和を戦利品として米軍に渡したく無かった」と仰っていたことが今も頭から離れません。
日本人が失った何かを感じた言葉でした。



No title

零戦は本当、緒戦の神話から悲しい特攻まで、機種更新されなかったゆえに色々な戦場を体験してますね。
紫電や雷電は完全な意味では後継機たり得なかった。
数的あるいは能力的に。
隼が飛燕や疾風等の新鋭機に更新できたのに、零戦は最後まで主力だったのと対照的だったと思います。

私が書く文章は悲壮感漂うものが多いですが、子供の頃から零戦の話を多く見てきたゆえのものだと思います。


大和関連だと、私はこの話が心に残っていますねぇ。
それは、宇宙戦艦ヤマトは、旧軍関係者にとっては複雑で、否定する方も多いそうです。
しかしある乗組員は大和ミュージアムの宇宙戦艦ヤマトの前でこう言ったそうです。
「どういう形であれ大和の存在が受け継がれてゆくのは嬉しい」
色々な思いを内包した言葉だなぁと思います。


さてゼネメモですが了解いたしました。
おいくらまでなら確保しておきましょう?

予算について

了解してくださりありがとうございます。
予算の方は本体が9千円位までです。1万以上だと厳しいです。
今のところ用意出来るのが1万円です。
送料は当然の事ですが私が負担しますので、純粋にゼネメモの予算は上記の通り1万円までです。
零戦もある種不憫な機体ですが、幻に終わった烈風も不憫な気がします。登場時期でライバルがF8Fにされがちで、あまり活躍できないだろうと言われますが零戦の後継機という立場からすればライバルはF6Fだと思います。要するに烈風は開発が遅すぎた故に正しく評価されない機体となってしまったと思います。

No title

探しておきますねー。

烈風は開発スケジュールが上手くいってれば、F6F相手だったでしょうね。
あの機体は開発が難航しすぎたのが不憫ですが、うまくいかなかった理由が海軍側のメンツを立てるためだったというのが。。

F8Fは最強のレシプロ機と呼ばれており、まぁ間違ってはいないと思います。
ただ航続距離が艦上戦闘機としては致命的に短いので、零戦やムスタングのような戦略戦闘機にはなれないんじゃないかなーと思います。
プロフィール

三式

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