キングゴジュラス野生体捕獲作戦 前編

ゾイドSS キングゴジュラス野生体捕獲作戦 前編

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「そうか……」
前線の状況報告を受け、ヘリックはがっくりと肩を落とした。
軍部首脳会議。並居る将軍達を前にして、ヘリックは決して落胆を見せてはいけない立場である。
彼の意思はそのまま全軍に伝わる。しかし戦況の報告は、彼がそうするのも無理はない程に、悲惨なものだった。
「精鋭を集めた第四師団が壊滅、か。敵の新型は相当強いな……」

オルディオスの配備でギル・ベイダーの頭を抑えることに成功した共和国軍は、再び進撃を開始した。
しかし暗黒軍の対応は早かった。新鋭空戦メカ、ガン・ギャラドをはやばや配備したのである。

飛行性能でオルディオスを上回るガン・ギャラドは、しかも十分な数が量産されていた。
ギル・ベイダーの護衛に付いたガン・ギャラドは、再び暗黒軍に優位性を与えた。
オルディオスがガン・ギャラドと必死で戦っている間に、ギル・ベイダーが共和国軍に襲い掛かる。
共和国軍は、再び猛烈な勢いで押し戻されていた。

ガン・ギャラドは強かった。
高速飛行モードと格闘モードに瞬時に切り替え可能な機体は画期的で、オルディオスをもってして勝つ事は難しかった。
いわんやバトルクーガーやサラマンダーF2では、という状況である。
何とかしてこれを排除する事は急務であった。

「大統領、残存する兵力全てを最前線に出しましょう。被害を考えず一気に敵首都を奪うんです。今ならまだ、強引に数で押せば突破できる可能性があります」
「しかし…、それでは甚大な被害が出るだろう」
「確かに、兵には辛い任務を言い渡す事になります…。しかし、他に方法が無いではありませんか。このままいけば暗黒大陸からの撤退です。今までの犠牲が全て無駄になります。それどころか、この中央大陸すら奴らの手に…」
「大統領、私も賛成です。確かに被害は大きいでしょう…。しかし今勝てば今度こそ平和になります。そして今やらねばジリジリと被害は増え続けるでしょう。今やらねば、いずれ今やる以上の犠牲者だって出かねません」

「…もう本当にこれしか道は無いのか…」
ヘリックは天を仰いだ。
彼とて、戦況が読めぬ器ではなかった。将軍達が具申する事は最もだ。
今決戦を避け、それでもジリジリと戦い続けるのは単なる先延ばしに過ぎない。その事くらいは分かっていた。
それでも、予想される犠牲を考えた時、彼はなかなか決断が出来ないのだった。

「大統領、これは非常に不確定な事ですが…」
ふいに、別の声が上がった。
「なんだね」
「仮に、ですが、敵新型に勝てるゾイドを我が軍が開発できれば良いのですね」
「もちろん理想だ。しかしそれは難しいだろうな」

オルディオス。バトルクーガー。ゴッドカイザー。TFゾイド。
共和国軍は、立て続けに強力な新型を開発していた。その開発能力は既に限界を迎えていたのである。
既に、"野性ゾイドをそのまま使っていたのでは、従来機以上に強力なゾイドは開発できない"そんな結論に達していた共和国軍は、キメラを合成する技術にすら手を出していた。
また、合体・変形するゾイドの研究も行い、その成果をTFゾイドという形で出していた。
それらは強力なゾイドを生み出した。しかし、その技術も、もう頭打ちになっていた。
"今ある技術はもう出しつくした。あと数年、研究や戦場でのデータを反映させない限り、今より強力なキメラを開発するのは難しい"
無念な事だが、共和国開発陣が現在言える答えはそれだけだった。

「いえ、大統領。先ほども申し上げました通り、非常に不確定な事ですが……、先日私の部下がメタロゲージ上空を飛行していた折、これまでにない新種の野生体を見つけたと報告しておりまして」

「野生体?」
「はっ、今更そんな…」
一斉に声が上がる。無理も無い。
今やデスザウラーやマッドサンダーでさえ、容赦なく散っていくのだ。
今、戦場で主導権を持つのはキメラ。これは一致した意見であった。

「いえ、どうか話だけでもお聞き願いたい。私も報告を受けた時は確かにそう思いました。しかしガンカメラの映像があります」
「いいだろう、流したまえ」

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・・・

「でかいな…」
映像が流れると一様に驚きの声が挙がった。
巨大な二足歩行野生ゾイドがそこに居た。
その野性ゾイドは上空から撮影する姿に苛立ちを覚えたのか、ゆっくりと空を睨むと割れんばかりの叫び声を挙げた。
映像はそこで終わっていた。

「どうも、今のでガンカメラが壊れたようで、映像はここまでです。機体にも少々のダメージがあったらしく、このあとすぐ引き返しています」
「戦闘ゾイドに傷を負わす野性ゾイドなんて聞いた事が無いぞ…。プテラスか?」
「いえ、サラマンダーです」
「バカな…」

映像が途切れた後、皆は一様にヘリックに目を向けた。
「よし、分かった。直ちにその野生体の捕獲作戦に入ろう。捕獲後速やかに戦闘用に改造する。もしかすると、これこそが戦況を打破する切り札になるかもしれん」

「…だが、この作戦が失敗した場合は、現在ある全ての兵力で総攻撃を仕掛ける」


翌日、二人の軍人が暗黒大陸から中央大陸へ運ばれた。
バーナード大尉とパーシー大尉。共にゴジュラス乗りのエースだ。
この時代になっても彼らはゴジュラスに固執しており、並居る新鋭機をいまだに震え上がらせていた。
「こんな折に中央大陸の土を踏めるとは。休暇でもくれるのかねえ?」
「バカ言え。休暇なら専用機で首都まで送ってくれるわけ無いさ。おそらく、何か面倒な仕事でも……」

「遠路ご苦労。暗黒大陸では苦労をかけているな」
ヘリックが二人を迎え入れた。
「早速ですまんが、君達に是非やってもらいたい事があってな。知ってのとおり暗黒大陸での戦況は芳しくない。今回の任務は、それを打破する切り札になるかもしれんものだ」

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・・・

「…以上だ。君達には、この未知の野生ゾイドを捕らえてもらいたい」
「野生体の捕獲…」
「そうだ。この野性ゾイドこそ、最強ゾイド、切り札になり得るものと考えている」
「大統領!」
バーナードは思わずヘリックに抱きつきそうになった。
「さすがです大統領! 最近はどいつもこいつも翼を生やしたり合体したりだ。ゾイドはそんなもんじゃねえ。でも最近は確かにキメラの奴らが強くて…。しかし任せてください大統領。必ずやその野性ゾイドを捕獲し、本物のゾイドの強さを見せてやります」
「あ、あぁ…、とにかくよろしく頼む」

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「お前なあ、余計なところでヒヤヒヤさせるなよ」
「ははっ、すまんすまん。しかし久々にいい任務じゃねえか」
「全く…」
しかし内心、パーシーとて同じ気持ちだった。
彼らは緒戦から戦っていた。その功績は佐官になる資格を十分に持っていたが、現場に出る機会を減らしたくないという事で、あえて大尉に留まっている。

歩兵からゴジュラス乗りへ大抜擢された時の事を、二人は今でも覚えていた。
ゴジュラスの力強い鼓動。一挙手一投足全てが重々しかった。
そのゾイド本来の力強さに感動し、すぐさま惚れ込んだ。
そして操縦法が、また彼らを虜にした。
ゾイドの操縦法は精神リンクと呼ばれる特殊なもので行われる。
操縦者の意思をダイレクトにゾイドに伝える。操縦桿やボタンはその補助に過ぎない。
そんな特殊な操縦法だから、ゾイド乗りには適正と不適正があった。また同じ機体でも、何故だかゾイド側が拒否するような事もあった。

そんな気難しいゾイドを乗りこなす事こそ誇りであり、醍醐味であった。
無論戦争である。だがそれは凄惨で弁明も余地も無い愚かなものである一方、ゾイドとパイロットによる誇りをかけた戦いであったのも確かだ。

そんな状況を一変させたのが、キメラだ。
馬に翼を生やす。ライオンとワシを合成する。
確かにずっと昔からその手の研究はあった。特殊改造機というやつだ。
だが、それらが大々的に量産されるなんていう事は無かった。

それはゾイドが生物であるという倫理的な問題であったし、また乗り手のプライドの問題でもあった。
キメラは高度に遺伝子を制御されているので、従来機の様に精神リンクを必要としない。相性もほとんど無かった。
合理的であるが、多くのパイロットは戸惑いを隠せなかった。
しかしそれでも、強力なそれを主力に据えなければならないほど、戦況は逼迫していたのだ。
そして実戦投入されたそれは、確かに素晴らしい能力を発揮していた。
従来機などもはや不要と思えるほどに…。

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・・・

「さてっと、まずは北東へ直進、か…」
謎の野生体には、サラマンダーがビーコンを打ち込んである。
発信のある方へ向け、二人の乗るゴジュラスは歩いていた。

「しかし…、減ったな」
「ああ。前に来た時はいつだったかな…。まだ新兵の頃だったか…。その頃は見渡す限り野生体で溢れていたんだが」

メタロゲージ内。
多彩な野性ゾイドで溢れかえったこの地に、かつての面影はない。
わずかに小型ゾイドがうろついているだけだ。
「…戦争はいけねえなぁ……って、思うよな…」
言うまでも無く、戦闘用ゾイドとして乱獲された結果だ。

「あぁ…」
ゾイドを何より深く愛する二人だが、同時にゾイドを使い戦争をしている。今もまた、新たに強力な新型を求めメタロゲージを探索中だ。
しかしその目的が最終的には平和の為である事も事実だ。
何もかも矛盾しているが、何一つ答えは出ない。
答えが出ないまま、二人は探査を続けた。

「しかし…、こんな痩せちまった場所に強力な新型が居るもんかね?」
「バランスを崩した生態系は崩壊する…。だが、逆に、狂った生態系が特殊な個体を生む事だってある」
「じゃあ今回発見したっていうのも…」
「可能性は高いな」

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「…いよいよ近いな」
「もうビーコンを使うまでもねえ。レーダーにハッキリ映ってるぜ」
エンジンをスローにし、気付かれないように近づく。

「こりゃあ…、想像以上だぜ……」
もはやレーダーを使うまでも無い距離に近づく。
目の前に、巨大な野生体ゾイドが居た。
「おいおい…。姿はそっくりだが、このゴジュラスの2周り以上はでかいぜ…」
そこに居たのは二足歩行の恐竜型ゾイドであった。
強靭な前後脚、太い尻尾、そして特徴的な背びれ。
どう見てもゴジュラスであったが、体が異様にでかい。
「さながらキングゴジュラスって所だな……。で、いくか?」
「…よし。いこう。だが油断するな。半信半疑で聞いていたが、野生体ながらサラマンダーに傷を負わせた話はあながち本当かもしれん」

ズンッ!
一気に出力をフルパワーまで上げたゴジュラスが二機、キングゴジュラスの正面に出た。
「悪いが捕獲する。大人しくしてくれ」

キングゴジュラスもこちらを振り向く。
「撃て!」
次の瞬間、必殺の電磁砲が次々に撃ち込まれた。
メカニックを一時的にショートさせる、捕獲用の装備だ。

だが、キングゴジュラスはさしてダメージを受けた様子もなく、ジリジリと接近してきた。
「おいおいおい、嘘だろ!戦闘ゾイドだってちょっとはダメージを受けるんだぜ…」
「くそっ、撃ち方やめっ! こうなったらこのまま捕まえるぞ」

迫り来るキングゴジュラスをがっしりと受け止める。
だが、キングゴジュラスは構わず歩を進める。
「うおっ! なんてパワーだ…」
野生体。補助ブースターもアシスト機能もない。ただ素の力でゴジュラス2機をかるがる越えているのだ。

「機体が持たねぇぞ…」
「ぐっ………」
そのまま跳ね飛ばされる。
唖然とする二人に目もくれず、キングゴジュラスはそのまま去っていった。

・・・・・・・・・
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・・・

「大統領、ありゃあすげえゾイドです。電磁砲は効かん。ゴジュラス2機がかりでまるで動かん。野生体だが下手すりゃデスザウラーより強いかもしれないです」
「見た目はゴジュラスに酷似していました。おそらく…、激変したメタロゲージの環境にあわせ進化した特殊なゴジュラス個体かと…」
「ふぅむ…。まさか野生体でそこまで強いとは、な」

通常、ウルトラザウルスやマッドサンダー級であっても、野生体はそこまで強くない。
敵弾に耐える装甲、効率よく加速する為のブースター、ここぞという時に一気にエネルギーを放出する為のエネルギータンク、etc. 様々な人工パーツが加わる事により、強力な"戦闘用"ゾイドとして生まれ変わるのだ。

「明日、部隊を編成しなおして再び挑もう」

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後編に続く
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