ゾイドコンセプトアートIIIの感想

さてさてコンセプトアートIIIの事。



今回も大いに楽しめましたが感想を書いてみたいです。
長いです。



まず、この本、作者のテンションが異様に高いのが伝わってくる。
いやIもIIも高いと感じたけども、今回、IIIは特に高いと感じる。

・・・ガンダムユニコーンのアニメは、製作現場のテンションが非常に高いと電ホビ等に書いてあったけど、凄く分かる。
ガンダムが好きでアニメーターになって、そのガンダムを思い切り動かせる喜びを常に持っている人ばかりで構成されたのが、あのアニメなんだろうと思う。
全くブレない作画を見ているとただただ圧巻。
あの圧巻の作画を支えているのはスタッフ個々のテンションであろう事は想像に難くない。
作品は時に、技量よりテンションで決まったりする。
やはり勢いが俄然違ってくる。これは私も過去にゲーム会社で多く経験した。

で、この本は、技量的にMAXの人がテンションMAXで作った本だと感じる。
だからもう、圧倒的ではないか。



今回は地名が多く出てきます。
トビチョフとかバレシアとかオベリアとか、馴染み深い名前が出てきた事に感動。
しかしそれだけに、ゾイド星中央大陸の主要都市の地名は把握しておきたいところです。

こちらはヒストリーオブゾイドの地図の模写ですが、地名の把握に役立てられたし。
120725a.gif
クリックで拡大


さてコンセプトアートIIIですが、最初に感じたところとしては描写がこれまでより細かくなったなと思いました。
戦闘の描写や戦況の推移など、これまでより非常に具体的になっています。
地名が大々的に出ている点もそうだし、個々の戦闘の描写もより細かい。

衝撃的だったコンセプトアートIは、ゾイド星の歴史の再構築というか…、大きな根底を築き上げる事に注力し、世界を俯瞰で見せることに重点を置いていたように感じます。
IIもまた、地球人来訪とメカ生体誕生の秘話を見せる事に注力していたように感じる。

そしてIII。
IとIIが、ゾイド星の再構築された土台を築いたからこそ出来る、迫力あるより具体的な描写を行っており、まさに「最終決戦」の謳い文句に相応しくボルテージを上げてきてきたなと思いました。

ただ、「描写が細かい」とはいえ、ガチガチに固められているわけではなく、ユーザーが想像できる幅は残してある。
このバランスが絶妙だと感じます。
そう、コンセプトアートは、あまりにも大胆な事をサラリと言ってのけるから、今までの設定・描写に慣れ親しんだ身とすれば最初はギョっとする。
思わず否定したくなる箇所もある。だけども絵の素晴らしさ等もあり、それでも惹き込まれる。
その結果、表面だけ見れば否定したくなるような箇所だとしても、想像できる余地がある事に気づき、補ってゆける風にしてある。
ゾイドの世界は必ず膨らんでいる。





以前にゲーム会社に居た時に、「続編」とか「リメイク」を作るのは、人気作であればあるほど本当に難しかった。
(商業的な観念ではなく、あくまでゲームの質を求める立場として)
それは「続編」なら必ず新しいキャラや設定が必要となる。「リメイク」でも付加価値を出すために、新キャラや新イベントを入れたりする。
それが従来の設定・世界と喧嘩しないかどうかは、膨大な考察が必要となる。
「面倒いから…」あるいは「派手なイベントや設定を入れた方が商業的観念から武器にしやすいから」となってしまうとそのシリーズは崩壊する。
必ずユーザーが割れる。

私のゲーム製作時におけるスタンスは、コラムの「HMMの設定に関して」も参照されたし。
ゲーム製作以外での、もうちょっと分かりやすいかもしれない例を出すと、私の「オリジナルゾイド」や「改造ゾイド」も参照して頂ければ幸い。
それらは、必ず既存のゾイドバトルストーリーに矛盾しない設定を作ってあります。
非常に保守的に無難にまとめてある。
その点から察して頂けると分かり易いかと思います。

私の場合、世界は大事にしたかったので、割と保守的にまとめる傾向が強かった。
ただ設定を大事にする一方、保守的過ぎてインパクトは薄かったなぁ…。
私は守ることには長けていても、攻め広げる事は苦手だったなと思う。
そういう意味からすると、このコンセプトアートという本は、新しい解釈や設定をボンと出しつつも、それが上手く喧嘩しないようにしてある。
攻めも守りも兼ね備えられているのが衝撃でした。

想像が膨らむといえば、ゾイドの世界そのものへの想像でありますが、加えて細かい所でもあります。
部隊同士の戦いで、シールドライガーやディバイソンなどの新鋭機に混じって、旧式のマメンチサウルスが居たりする。
こういうのが、出せる限界まで戦力を投入してる総力戦って想像できたりして、実に良いなーと感じました。
バスターヘッドとか、新規の割と大型のゾイドも出てきてたりするし。そういう点も幅の広さを見せていると思う。




今回の物語のキーはデスザウラー。
正直に言うと、描写に違和感が無いわけではなかった。
ただその上でやはり燃えた。

違和感というのは根本を言えばデスザウラーの神格化。
私が88年にゾイドに入ったのがちょうどデスザウラー最強時代だから、このゾイドはとんでもなく強かった。
けども同時に一通常ゾイドであった。
だから様々な戦場に登場し、多くの改造タイプが登場し……、量産ゾイドという感じであった。
コンセプトアートのデスザウラー、これはネタバレになるのでご注意を…、
デスザウラーはゾイドコアが無い。
極めて謎のゾイド、そしてコアが無いゆえに腹部を貫かれても死なない不死身さ。
その位、通常ではない存在。
あと、とにかく荷電粒子砲を撃ちまくる。
私のイメージでは、遠距離あるいは対マッドサンダー戦以外では、むしろ格闘戦を好む機体であるイメージが強かった。

ただもう一度言うと、その違和感の上でこれはアリ。
非常に燃える。
それに、先に書いたように、この本は違和感を感じたとしても惹かれる。
それ位の力強さがある。
そして、その違和感も想像力を深く考えれば、そこから世界を広げることが出来る。
バトルストーリーの量産・デスザウラーに繋げる解釈も十分可能。
もちろん神格化されたデスザウラーを楽しむ事も出来るし。

ゾイドは長く続くゆえに様々な思い入れを持つファンが居ると思うけども、それら様々な思いを持った人達をまとめて納得させられる実力と、また想像・解釈の余地を残しているという懐の広さを併せ持っている本だと改めて思います。

また無敵のデスザウラーを倒すために作られた、切り札・マッドサンダーの設定にも要注目。
この点は本当に実際手に入れてから読んで欲しいので書かないけども、反荷電粒子シールドの設定が秀逸で、最終決戦へ向けてこれ以上無い盛り上がり・同時に悲壮感を見せている。


ゾイドのデザインの魅力については既に何度も書きましたが、それでももう一度言うと、やはり素晴らしい。
ディバイソン、ディメトロドン等、新しいゾイドが出るたびに興奮の連続です。
あとなにげに、マッドサンダーを後方から映したショットがあるので、キットでは豪快な肉抜き処理がされている反荷電粒子シールドの裏面のモールドが分かるのがポイント高し。
ゴドスは通常型と指揮官型の二種類のコックピットがちゃんと登場したり、ゾイド以外のメカニック(水中輸送用ユニット等)が出てくるのも良い感じ。




あとは…、IIにも出てきたゴジュラスが、今回「改」として登場する。
これが実にカッコ良いのです。
顔つきが変わっていますが、ノーマルゴジュラスのデザインを色濃く残しながらも、かなり実際のティラノサウルスに近いラインになっており必見です。
あと、この物語のキーはデスザウラーと書きましたが、ゴジュラス(およびそのパイロット)もキーであります。
それゆえゴジュラスの戦闘シーンも非常に多いんですが、これもまた燃える。
時間稼ぎの為にデスザウラーに挑んだり、マッドをデスザウラーに向かわせるためにコングに突撃したり…。
ボロボロになりながらも何度でも立ち上がるのが、初代最強ゾイドの面目躍如といった感じで、久々に強いゴジュラスが見れたのは大満足でした。
そんなゴジュラスがどうなるかも、是非実際手にとって確認して欲しいです。


最終決戦ですが、よく見ると「共和国と帝国による」とある。
で、
最後の方に、大型の、ギル・ベイダーの頭部を思わせる形状を持った謎のゾイドも出てくる。
デスザウラーのコアの件など、謎のまま残されたことも多い。

…これは、来年の7月、また期待して良いのかなぁ。

まぁ、コンセプトアートIVが出るかどうかは分からないけども、3年かけて再構築されたゾイド星の歴史が、何らかの形で次につながってゆく事を願ってやみません。
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